接遇とは、「おもてなし」の心を持って相手に接すること。
身だしなみや言葉遣いに気を付けるのはもちろんのこと、相手の立場を考えながら、思いやりのある行動をすることを心がけましょう!
サービス業で接客マナーを身につけていることは基本中の基本ですね。
そこにプラスして「接遇」が重視される世の中になりました。
介護現場においても例外ではありません。
本コラムでは、
■接遇とは何か
■接遇マナーの5原則
■介護現場で求められる接遇のポイント
についてお伝えしていきます。
接遇とは?
最近よく耳にするようになった「接遇」という言葉。
この「接遇」は「接客」とどのような違いがあるかをご存知でしょうか?
接客 → お客様に必要なサービスを提供すること
接遇 → 接客から一歩踏み込んだ「おもてなし」の心を持って相手に接すること
お客様によりよいサービスを提供するためのスキルで、円滑なコミュニケーションや信頼関係を築くために不可欠な要素です。
接遇って介護業界にも必要なの?
介護の現場で接遇が求められる理由はいくつかあります。
1,利用者さまの尊厳を守るため
介護職員は、ご家族にとって大事な人である利用者さまの尊厳を守り、自分らしく生きられるよう支援することを使命としています。
ひとりで日常生活を送れなくなったとしても、他人に子供扱いされたり言動を強制されたりすれば、利用者さまもご家族も悲しく、辛い思いをします。
利用者さまをひとりの人間として敬い、それを行動に移すためにも、介護職員は正しい接遇マナーを身につける必要があるのです。
2,信頼関係を築き、安全に介護を行うため
接遇マナーを守って利用者さまと接することで、信頼関係を築きやすくなり、ケアをスムーズに行えるようになります。
介護の現場では、介助の際に介護職員と利用者さまが密着する場面が多々あります。
しかし、信頼関係がないと利用者さまから抵抗されてしまい、転倒や怪我に繋がる可能性もあります。
事故を起こさず安全に介護をするためにも、接遇によって利用者さまとの信頼関係を築くことが求められています。
3,顧客満足を目指したサービスを提供するため
ホテルや百貨店が接遇に力を入れているのは有名ですが、利用者や入居者は大切なお客様という考えのもと、介護や医療の現場にもこの言葉が定着しつつあり、顧客満足を目指したサービスを提供する施設・病院が年々増えています。
介護は、利用者さんをサポートするのが仕事で、商品を提供したり販売したりする接客とは異なりますが、紛れもなくサービス業の一つ。
介護業界で働く方は、「介護=サービス業」であることを念頭におきましょう。
接遇マナー5原則
接遇マナーの基本とされるのが、挨拶、言葉遣い、表情、傾聴、身だしなみの5つです。
こちらでは、介護の接遇マナーの基本5原則について詳しく解説します。
1.挨拶・声かけ
挨拶はコミュニケーションの基本です。
日頃から利用者だけでなくスタッフ同士でも挨拶を癖づけましょう。
自分から挨拶することはもちろんですが、利用者さまやご家族に歩み寄るために、相手の目を見てにこやかに挨拶をするように心がけましょう。
ただし、かしこまった挨拶は近寄りがたい印象を与えてしまいます。
また、覇気がなく、目が合わない挨拶も、相手に不快感を与えてしまうので気を付けましょう。
よく「挨拶は大きな声で元気良く」と言われますが、ご利用者によっては大きな声が苦手な方もいます。
大きすぎず、小さすぎず、相手が聞き取りやすい声量で話しかけましょう。
2.言葉遣い
利用者さまに対する言葉遣いは、敬語が基本です。
しかし、敬語といっても聞き慣れない言い回しや過剰にへりくだった言葉遣いは堅苦しくなってしまいます。
介護現場は利用者さまにとっては生活の場でもあるので、日常的かつ家庭的な安心感が得られる柔らかい対応が理想です。
かといって、親しみを持って会話しようとして馴れ馴れしい言葉遣いや幼児語で接してしまうのは良くありません。
親しみを込めていても丁寧な言葉遣いで接しましょう。
また、接遇のスペシャリストを目指すには「クッション言葉」を使用していきましょう。
クッション言葉は、何かをお願いしたり、お断りするときに本題の前に添えて、印象を和らげる働きがあります。
クッション言葉の具体例
〜質問〜
◯失礼ですが、よろしければ
「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか?」
〜依頼〜
◯恐れ入りますが
「恐れ入りますが、お薬はお済みですか?」
◯お手数ですが
「お手数ですが、服をご準備いただけますか?」
〜断り〜
◯誠に申し訳ございませんが
「誠に申し訳ございませんが、明日はお休みをいただいております」
〜肯定言葉〜
◯「恐れ入りますが、ここでのタバコはご遠慮いただけますか」
ひと言添えるだけで、言葉がこんなにも丁寧に聞こえるわけです。
利用者様に嫌な印象を与えず、親しみやすさも感じていただけるような言葉使いのスペシャリストを目指していきましょう!
3.表情・笑顔
利用者さまは、職員の表情をよく見ています。
怒った顔や疲れた表情で対応すると、利用者の方の気分はよくありません。
相談事や世間話なども「この人には話しかけづらいな」と思われてしまうでしょう。
介護現場はどうしても忙しくバタバタしがちで余裕が持てない時もあると思いますが、利用者さまと友好的な関係を築くために、介護職員はどんなときでもなるべく笑顔でいることを心がけましょう。
利用者さまのお話を聞くときは、相手の目を見て明るくにこやかに対応することが大切です。
また、コロナなどの感染症対策でマスクを着用していると表情が見えづらく不安な気持ちを与えてしまうことがあります。
口元の口角を上げるだけではなく、目元の表情も意識してみましょう。
4.態度
介護職員の立ち居振る舞いは、利用者さまとコミュニケーションをするうえでとても重要なものです。
丁寧に接するということはもちろんですが、ただ丁寧であればいいかというとそうではありません。
端的にいうと、「利用者の方が話しかけやすい」立ち振る舞いを意識しましょう。
立ち方、歩き方、物の受け渡し方など、立ち居振る舞いにはいろいろありますが、背筋がピンと伸びているだけでも、相手に好印象を与えることができます。
また、会話をする際は、常に自分の前面を見せ、相手と「正対」して接してみましょう。
上半身を相手に常に見えているようにするだけで印象は大きく変わります。
利用者さまが声をかけたくなる、話をしたくなる態度を心がけましょう。
接遇において最も大切なことは「相手の気持ちに立って考える」こと。
利用者の方が何をして欲しいのか?
どうしたら喜んでもらえるだろう?
と常に想像力を持って考えましょう。
利用者を思いやる心が態度となって現れるはずです。
5.身だしなみ
介護現場では、利用者さまの体に直接触れることが多いため、清潔感が求められます。
相手に不快感を与えない清潔な身だしなみを心がけ、メイクや服装、髪型にも気を配りましょう。
身だしなみは見た目だけの問題ではなく事故防止の観点からも非常に重要です。
身だしなみが整っていることと、おしゃれをしていることは違います。
介護をするのに適しているのは、機能性を重視した身だしなみです。
加えて、接遇面においては清潔感も大事にしましょう。
介護に適した身だしなみチェックリスト
◆髪型:
肩にかかる長さの髪は必ず束ねておきましょう。
常に頭皮も清潔にしてフケやベタつきがひどくないよう注意してください。
◆メイク:
入浴介助などで汗だくになって化粧が取れてしまうことも多々ありますので、薄めのメイクが望ましいでしょう。
◆手・爪:
手はこまめに洗って常に清潔に。感染症対策においても非常に重要です。
爪は短く切りそろえ、引っ掻いて怪我しないように爪先はやすりで整えましょう。
ジェルネイルやつけ爪はNGです。
◆服装:
指定がなければ動きやすく汚れてもいい服装にしましょう。
ひっかかって事故につながる可能性があり危険なため、破れやほつれなどがある服は控えましょう。
同様の理由からアクセサリーも基本的にはNGです。
靴はヒールではなく動きやすい靴で、汚れやにおいがないように清潔に保ちましょう。
◆におい:
口臭、汗臭、加齢臭などに気をつけましょう。
自身のにおいはなかなか気づきにくいものです。
普段から体や口腔内は清潔にする習慣をつけてください。
食事後や喫煙後の歯磨きやケア、汗をかいた後は汗拭きシートで雑菌の繁殖を防ぐなどこまめなケアをしましょう。
◆持ち物:
ピンやペンなど、怪我や事故につながる可能性のあるものを所持する際には十分に気をつけましょう。
介護の接遇で特に意識したい3つのポイント
1,目線の高さを合わせる
会話をするときは、目線の高さを利用者さまと同じにするのが理想とされています。
車椅子や椅子に座っている方と話すときは、かがんだり、しゃがんだりして目線の高さを合わせましょう。
完璧に同じ高さにするのは難しいので「やや下」ぐらいで大丈夫です。
利用者さまよりも上の目線にならないように気を付けましょう。
2,忙しくても傾聴の姿勢を忘れない
接遇では、自分が話すよりも相手の話を聞くことのほうが重要です。
誰でも自分の話を親身になって聞いてくれた相手には、受け入れてもらえたと安心し、信頼を置けるようになります。
多忙な介護職員にとっては、一人ひとりに時間をかけてられない…という気持ちもあるかもしれませんが、介護の現場では、不安なことや辛いことなど、話を聞いて欲しいと思っている利用者さまが多いはずです。
たとえ忙しくても利用者さまから話しかけられたら、一旦手を止めてじっくり話に耳を傾けましょう。
話を聞いて利用者さまの気持ちを汲み取り、理解者になろうとする姿勢が大切です。
3,利用者さまへの思いやりの心を持つ
接遇は、相手への思いやりが何より大切です。
利用者さまを思いやる気持ちがないと、自分の主張やルールを押し付けてしまうことがあります。
相手の気持ちを考えず、自分本位の介護は接遇マナーに反します。
常に利用者さまに思いやりを持って接する姿勢を心がけましょう。
思いやりを忘れなければ、自然に言葉遣いも正しくなり、優しい表情もできるようになります。
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以上、接遇マナーの原則、ポイントについてお伝えしました。
しかし接遇に、必ずしも「これが正解」というものはありません。
利用者それぞれに性格や思考が違い、通り一遍の接客は通用しません。
一人ひとりと向き合って、その方のニーズを汲み取れるように、まずはしっかりと話を聞くことが大切です。
そして相手の立場を考えながら、思いやりのある行動をすることを心がけましょう♪
次回は、介護士(介護福祉士)になるための方法についてご紹介します!
お楽しみに★