★2022年10月~従業員数101人以上の勤め先&2ヶ月を超える雇用見込み・年収106万円(月額8.8万円)を超える場合は社会保険加入義務が発生する
短時間労働者における社会保険の適用範囲は、2022年10月と2024年10月の2回に分けて拡大されることが決まっています。
今は扶養の範囲内で勤務されている方も、適用範囲の拡大で働き方を見直そうと思われるかもしれませんね。
社会保険加入となると、保険料が負担=デメリットだと感じられるかもしれませんが、これからの人生を考えたときには、非常に心強いメリットになることもあります。
ここでは、2022年10月からどのように変わったかと社会保険加入によるメリット・デメリットについて解説します。
◆短時間パートの社会保険制度は2022年10月からどう変わった?
A,対象となる勤め先
・【2016年10月~】従業員数501人以上の勤め先
★【2022年10月~】従業員数101人以上の勤め先
・【2024年10月~】従業員数51人以上の勤め先
B,その他4つのチェック項目
★2ヶ月を超える雇用の見込みがある(※2022年9月までは1年以上の雇用見込み)
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・月額賃金が8.8万円以上
・学生ではない(※休学中や夜間学生は加入対象)
今回の社会保険適用要件の拡大によって大きな影響があるのが「雇用期間が1年見込まれる」要件の変更ではないでしょうか。
これまでは週20時間未満の短時間労働者でも雇用期間が1年見込まれない場合、社会保険の加入対象に該当しなかったのですが、改正後は2ヶ月以上の雇用が見込まれる場合には社会保険加入の対象となります。
また、2024年10月からは事業所の規模が「被保険者の総数が常時50人超」まで更に拡大する予定になっており、いわゆる「社会保険の扶養内」で働くことがますます厳しくなってきます。
◆社会保険に加入するメリット、デメリット
現在扶養枠内で働いている方や、最近結婚や出産をして今後の働き方を考えている方などは、このタイミングにこれから先の自分の働き方を改めて考えてみませんか。
【社会保険加入のメリット】
◆将来、基礎年金に加えて、厚生年金保険(報酬比例)の分だけ年金額が増加する
これまでは、被扶養配偶者の年収が130万円を超えると、全額本人負担で保険料(国民年金・国民健康保険)が新たに発生するものの、保障内容に変化はありませんでした。
これからは、年収106万円(月額8.8万円)を超える等の各種要件を満たした場合に、厚生年金保険・健康保険に加入し保険料負担(労使折半)が新たに発生するものの、その分保障も充実します。
保険料の半分を会社が負担してくれることから、月々の保険料が安くなる場合もあります。
◆病気やケガによる後遺症に対して、障害厚生年金がもらえるようになる
◆死亡した場合には、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が受け取れます
◆健康保険から、傷病手当金(病休期間中、給与の2/3相当を支給)や出産手当金(産休期間中、給与の2/3相当を支給)が出るようになる
≪年金額・保険料シミュレーション≫
あなたの年金がどう変わるか確認してみましょう。
詳しくはねんきんネットで確認ください。
◆老齢基礎年金
月額約65,000円 (年額約780,000円)
※40年間加入した場合の満額。
※60歳を超えた方を含め、加入期間が40年に満たない場合は、厚生年金保険に加入すると、年金額を増やすことができます。
◆増える報酬比例部分の年金額(月額)の目安
年間給与
加入期間 |
120万円 | 150万円 | 200万円 | 250万円 | 300万円 |
1年 | 500円 | 600円 | 800円 | 1,000円 | 1,300円 |
5年 | 2,500円 | 3,200円 | 4,300円 | 5,100円 | 6,600円 |
10年 | 5,000円 | 6,400円 | 8,700円 | 10,200円 | 13,300円 |
15年 | 7,500円 | 9,600円 | 13,000円 | 15,300円 | 20,000円 |
20年 | 10,000円 | 12,900円 | 17,400円 | 20,500円 | 26,600円 |
25年 | 12,500円 | 16,100円 | 21,800円 | 25,600円 | 33,300円 |
30年 | 15,000円 | 19,300円 | 26,100円 | 30,700円 | 40,000円 |
◆年金保険料(月額)の目安
年間給与 | 120万円 | 150万円 | 200万円 | 250万円 | 300万円 |
保険料額 | 9,000円 | 11,600円 | 15,600円 | 18,300円 | 23,800円 |
※年金額及び年金保険料は概数であり、実際の金額とは異なります。
◆ご自身の年金額を調べたい方はこちら
ねんきんネット https://www.nenkin.go.jp/n_net/index.html
出典:厚生労働省HP 社会保険適用拡大特設サイトhttps://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/dai3hihokensha/
【社会保険に加入するデメリット】
◆給与の手取り額が減る
社会保険に加入すると毎月の保険料が給与から差し引かれるため、手取り額が減ります。
例えば、月額賃金88,000円(年収106万円)の場合、社会保険に加入すると年間15万円ほどの社会保険料が引かれることになります。
◆配偶者の手当てが受けられなくなる可能性がある
配偶者が会社に勤めている場合、会社独自の制度として設けられている「配偶者手当」や「扶養手当」の要件に、年収制限があったり、扶養内かどうかという場合が多いためです。
◆将来のキャリアを考えて働く
2016年に同様の改正が行われた際には、社会保険加入を避け「働き渋り」が起こるのでは…と懸念されていました。
しかし、改正後に労働時間の状況はどのように変化したのか、独立行政法人労働政策研究調査機構による調査データでは、
・労働時間を減らした…32.7%
・労働時間を増やした…54.9%
という結果で、労働時間を増やして厚生年金の加入を選ぶ短時間労働者が増加しました。
理由として、手取りが下がることよりも将来の年金アップのメリットや、傷病手当などが受けられる健康保険の加入が魅力だったようです。
・社会保険に加入しなかった理由(複数回答)
1位…配偶者控除を受けられなくなるから 54.7%
2位…健康保険の扶養から外れるから 50.6%
3位…手取り収入が減少するから 49.4%
・社会保険に加入した理由(複数回答)
1位…もっと働いて収入を増やしたい(維持したい)から 44.9%
2位…将来の年金額を増やしたいから 44.3%
3位…会社側から言われたから 32.8%
※参考:「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」及び「社会保険の適用拡大に伴う働き方の変化等に関する調査」結果/独立行政法人労働政策研究機構:平成30年8月31日
今後も短時間労働者に対する社会保険の適用は拡大していきます。
また、最低賃金も年々上昇しており、いわゆる社会保険の扶養者として働ける条件は厳しくなり、条件にあった求人を探すことも難しくなっています。
「子供が小さいから」
「家庭との両立をしっかりしたい」
「1円たりとも損をする働き方をしたくない」
など、働く動機やその条件は人によって様々ですが、キャリアを考え行動をしている方は、子供の成長などで働き方に制限がなくなったとき、自分が本当にやりたい職種の仕事に就けたり、正社員としてより裁量や責任のある仕事を任されたり、より高い収入が得られる仕事に就くことができる可能性が高まるでしょう。
子育てや家事で日々忙しい中、将来について考えることはとても難しいと思います。
ただ、「今」の条件だけを基準に仕事をしていては、自分が望む未来を掴むことは難しいかもしれません。
今回の社会保険制度の変更をきっかけに、少し先の未来に目を向けて、「働く」ことについて考えてみる機会にしてみてはいかがでしょうか。
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次回は「最低賃金の改訂」についてお伝えします!
お楽しみに★