この記事のまとめ ――→
→企業などから直接依頼を受けず、インターネット上で公表されている情報を収集するなど、新たな形態で運営している求人メディアにも適用されることになった
→求職者が安心して求職活動ができる環境の整備と、求職者と雇用主のマッチング機能の質の向上を目的としている
― 目 次 ―
◆ 改正の主な目的
◆ 改正ポイント① 求人等に関する情報の的確な表示の義務化
◆ 改正ポイント② 求人メディア等に関する届出制の創設
◆ 改正ポイント③ 個人情報の取扱いに関するルールの整備
職業安定法とは、職業紹介など労働市場における基本的なルールを規定している法律です。
2022(令和4)年10月1日より一部改正が行われました。
今回の改正は、求職者が安心して求職活動をできる環境の整備と、マッチング機能の質の向上を目的としています。
▼改正の主な目的
1、新たな形態の求人メディアに対して規制を及ぼす
従来の求人メディアは、求人を行う企業や求職者から依頼を受けて、求人情報や求職情報を掲載しているものが大半でした。
しかし最近では、企業などから直接依頼を受けず、インターネット上で公表されている情報を収集するなど、新たな形態で運営されている求人メディアが続々と登場しています。
このような新たな形態の求人メディアは、これまで職業安定法による規制の対象外となっていました。
しかし、求職者に対して影響力を拡大している実情に鑑み、求人情報・求職者に関する情報をクローリングして提供したり、他の求人メディアに掲載されている求人情報を転載している求人メディアに対しても、職業安定法による規制を及ぼす改正が盛り込まれました。
2,求人メディア全体に対する規制を強化する
新たな形態の求人メディアだけでなく、従来型を含めた求人メディア全体について、掲載内容や事業運営の適正化・質の向上を図る必要性が指摘されていました。
そこで、求人メディア全体に対して適用する規制として、
〇 求人情報の正確性・最新性を保つための措置
〇 個人情報保護・苦情処理体制の整備
等を義務付ける改正などが盛り込まれました。
▼改正ポイント① 求人等に関する情報の的確な表示の義務化
職業紹介事業者・求人を行う企業・募集情報等提供事業者などに対して、下記の事項において求人情報の的確な表示を義務付けています(職業安定法5条の4)。
☑ 求人情報
☑ 求職者情報
☑ 求人を行う企業等に関する情報
☑ 自社に関する情報
☑ 職業安定法に基づく業務の実績に関する情報
従来は厚生労働省の指針によって、的確表示の基準が示されていたに過ぎませんでした。
しかし今回の改正により、的確表示は法令上の義務に昇格し、「虚偽の表示」や「誤解を生じさせる表示」を行った違反者は改善命令等の対象となります。
例えば、以下のような記載は「虚偽の表示」となります。
・ 実際に求人を行う企業とは別の企業の名前で求人を行う
・ 「正社員」と謳いながら、実際には「アルバイト・パート」の募集をする
・ 基本給○万円と表示しながら実際にはその金額よりも低額の賃金を予定している
・ 実際には採用予定のない求人を出す
また、以下のような記載は「誤解を生じさせる表示」になります。
・ 優れた製品開発実績を持つグループ会社の実績を大きく記載し、あたかもその求人企業の実績であるかのように表示する。
・ 請負契約の案件であることを明示せず、労働者の募集と同じ表示をする
・ 社内で給与の高い労働者の基本給を例示し、全ての労働者の基本給であるかのように表示する
・ 固定残業代について基礎となる労働時間数等を明示せず、基本給に含めて表示する
・ 営業職が中心の業務について事務職と表示する
参考:厚労省 令和4年 改正職業安定法Q&A
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000965559.pdf
▼改正ポイント② 求人メディア等に関する届出制の創設
「特定募集情報等提供」とは、募集情報等提供(求職者に関する情報を収集せず、単に求人情報だけを掲載するサービスなども含む)のうち、求職者に関する情報を収集するタイプのサービスのみをいいます。
例えば、以下のいずれかに該当する求人サービスは特定募集情報等提供を行う事業に該当します。
☑ 求職者に会員登録を求める求人サービス
☑ 求職者のメールアドレスを収集して、求人情報を掲載したメルマガを配信するサービス
☑ 求職者の閲覧履歴に基づいて求人情報を紹介するサービス など
なお、特定募集情報等提供事業を行おうとする場合、厚生労働大臣に対してその旨を届け出なければなりません。
また、既に特定募集情報等提供事業を行っている事業者も2022年12月31日までに届出をしなければなりません。
▼改正ポイント③ 個人情報の取扱いに関するルールの整備
特定募集情報等提供事業者に対する行為規制の一環として、求職者の個人情報を収集するに当たり、本人に対して収集目的の明示を義務付けました。
従前は、職業紹介事業者・求人を行う企業などを対象に、個人情報の保護に関するルールが既に定められていましたが、このルールが、今回新設された「特定募集情報等提供事業者」にも適用されます。
個人情報の利用目的の明示は、インターネットの利用その他適切な方法により行う必要があります。
<参考>厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000984587.pdf
次回は「児童指導員のキャリアアップ」についてです!
お楽しみに★